【短】恋がはじまるそのときは、



わたしたちは手を振りあって、その場を後にする。


振り向けば、優にぃはまだ下に降りずにわたしに手を振っていて。


いつもそう、いつも優にぃは、わたしが見えなくなるまでそこに立っていてくれる。


そんな優しいところも、好きだよ。


「ーーきゃっ」


なんて胸の中で思っていると、運の悪いことにわたしは足を滑らせる。


優にぃのこと考えすぎた。


や、やばい、落ちるーー


「みこっ!」


ぐっと歯を食いしばって、痛みを覚悟したのに、わたしの体は、全く痛くない。


振動は伝わったけど…っなんで?