【短】恋がはじまるそのときは、



ここ、道端だよ?


というか、わたしのこと恋愛対象じゃないんじゃなかったの?


恋、知らないんじゃなかったの?


完全にキスされると思ったわたしは、背中をそらしたまま、一歩一歩後ろに下がる。


ーートンッ。


あ、もう逃げられない。


わたしは道路側じゃないほうにいたから、コンクリートの壁に体が触れた。


「みこ、いいからじっとしとけ」

「ねっ、ほんと……っ」


もう黙れ、というように頰をむにっとつままれて、反対の手で後頭部に触れられて、優にぃのほうにグイッと寄せられる。