社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜


首を傾げた私に、もっと近づくようにと小さく手招く島田さん。ゆっくり耳元を彼女の方に近づけると、彼女も私の耳元に口元を近づけた。


「実は……あの飲み会で美帆ちゃんの横に座ってた茅ヶ崎くん、前から美帆ちゃんのこと気になってるって言ってて。だから、私、あの飲み会に美帆ちゃんを誘ったの」

ごめんね、と両手を合わせた彼女に、私は目を丸くした。

「え、いや、待ってください。私が真樹と付き合ってるの知っててどうして呼んだんですか。それに、向こうも知ってるはずですし。まず、茅ヶ崎くん、そんな雰囲気全く出してなかったですし情報間違いか何かじゃ……」

あの飲み会で、私と茅ヶ崎くんはゲームの話ばかりしていた。確かに、話は盛り上がったけれどそれだけだ。異性だということを感じるような言葉も、アピールも何もなかったし、彼が私を異性として見ているとはとても思えない。

そもそも、もし仮にそうだったとしても、私は真樹とは社内公認の恋人だ。それなのに、そんな彼氏持ちの私と接近させたって意味がないじゃないか。まさか、略奪でもさせるつもりだったのだろうか。


「いや、あのね。まず、茅ヶ崎くんの方は間違いなく美帆ちゃんのことを好きなの。それは、清水くんも言ってたし間違いないと思う。あとね、美帆ちゃんを誘った理由だけど……茅ヶ崎くんは美帆ちゃんが深川くんと付き合ってることはもちろん知ってる。だけど、だからって見てるだけなんて辛すぎる。だから、なんとかチャンスをあげたくて……」