「河合? どうかした?」
「あ、ううん。別に何もないよ」
「そう? ならいいんだけど」
そう言った清水と並んで、私達は事務所へと足を運んだ。
事務所まで向かう途中にも、さっきの話を聞いたからなのか周りの視線をいつもより感じるような気がした。
「おはようございます」
「あ、美帆ちゃん美帆ちゃん」
事務所に入り、いつものように挨拶をする。すると、私の横のデスクで既に仕事を始めていた島田さんが大きく私を手招いた。
「島田さん、おはようございます」
「おはよ、美帆ちゃん。あのね、なんか今朝から美帆ちゃんと深川くんの変な噂聞いちゃって……」
言いづらそうにしながら言った彼女の一言は、なんとなく予想がついていた。
島田さんは情報通だし、周りのことをよく見ている。それに、あの藤田さんとも親交のある彼女だ。そんな彼女が、あの噂について知らないはずがない。
「今朝、藤田さんから聞きました。でも、別れてなんかないですよ」
「うん。流石にあの噂を鵜呑みにはしてないんだけどね。大丈夫かなと思って。あと、一つ美帆ちゃんに謝らないといけない事があって……」
「謝らないといけないこと?」

