真樹がお風呂に入ってから、リビングのソファーで横になってスマホゲームを始める。
飲み会帰りにタイミングを見計らってIDを渡した茅ヶ崎くんからフレンド申請があったことを確認すると、私は気合を入れてレベル上げを始めた。
夢中になってスマホゲームをしていると、リビングの扉が開く音が聞こえてくる。真樹がお風呂から上がったんだな、と思いながらゲームを続けていると。
「真剣にやってるみたいだけど、イベントでも始まったの?」
スマホゲームに関してはイベントを中心に取り組み、あとはログインボーナス獲得だけを確実に取得するスタイルだった私があまりに真剣に取り組んでいるのを不思議に思ったのか、真樹がそう問いかけてきた。
「ううん、違う。今日の飲み会に茅ヶ崎優くんって営業部の子が来てて、その子ゲーマーだったんだけど、真樹、知ってた? しかも結構雑食で、これ、やってるんだって」
ビースリーのプレイ画面が映されたスマホを真樹に向ける。すると、彼は興味なさそうに「へえ」とだけ声を漏らした。
彼の専門分野は基本的にはバトルゲーム。オンライン対戦の出来るようなゲームから、RPGゲーム。乙ゲーやギャルゲーは専門外だ。
「まさか茅ヶ崎までやってるとは思わなかった。それより、今日、マルオと清水が行くっていうのは聞いてたけど……茅ヶ崎まで来てたんだ」
「うん、そうそう。名前も推しキャラの茅ヶ崎と二文字違いだし、ゲームしてるし、可愛いし、凄く良い子だったよ」
「ふーん、そう」
「あと、あんまりにも良い子だったから今フレンドになっちゃって……って、あれ、真樹? 寝るの?」
私に背を向けて部屋の方へと去って行こうとする真樹の背中にそう問いかけたけれど、返事はない。彼は、そのまま部屋の中へと入って行ってしまった。

