無意識のうちに、テーブルにうつ伏せている真樹の髪に手を伸ばした。彼の綺麗な茶色の髪は、触れるとさらさらと指先からこぼれ落ちた。
疲れてるはずなのにあんなメッセージ送ってきたり、誕生日にお祝いしてくれたり。そういうことをするのが、彼のずるいところだ。
私のことなんて、本当はこれっぽっちも興味がないくせに。
「ん、河合さん……?」
私が髪に触れたからなのか、突然もぞもぞと動き始めた。すっと、彼の髪に触れた手を腰の横に戻すと、彼はゆっくり顔を上げて私を見る。
本当に眠そうな顔をしている彼は、ごしごしと瞼を擦ると「ごめん。寝ちゃってた」と言って苦笑いを浮かべた。
「いいよ。こっちこそごめん。メッセージ気づかなくて」
「あー、ううん。こっちも言うならもっと早く言っておけば良かった」
「ありがとね。待っててくれて」
ぼそっと小さく、呟くようにそう言う。すると、彼は目を丸くしてこちらを見た。
「何よ」
「あー、いや。なんか、珍しく素直だなぁと思って」
「何よ、その言い草。まるでお礼の一つも言えない女みたいじゃない」
「いや、別にそういう訳じゃないけど」
くすくす、と笑って立ち上がった真樹はそのままお風呂場の方へと立ち去って行く。

