「お疲れさま。遅くなってごめん」
襖が開くと、その向こうから清水が顔を出した。襖の方向に目をやったみんなは次々に「お疲れ」と返事を返し、向かいに座っているマルオさんが清水を島田さんの向かい側に誘導した。
「あ、河合も来てたんだ。珍しい」
席に着く前、私を視界に入れた清水はそう言って笑う。
返事の代わりに苦笑いを返してしまったけれど、彼の言う通りだ。あらゆる飲み会を二つ返事で断ってきた私が、真樹もいないこの飲み会にいるなんて一体何があったんだと思うに違いない。実際、一番驚いているし後悔しているのは私の方だ。
ただ、茅ヶ崎くんというレアな雑食ゲーマーに出会えたのは唯一の収穫かもしれない。
「茅ヶ崎くん、茅ヶ崎推してるの?」
「はい。名前が一緒で気になってたのもありますけど、ちょっとクズっぽくてイケメンで好きなんですよね」
僕とは正反対ですけど、と付け足して笑う彼は、確かにゲームの中の推しキャラ茅ヶ崎とは真逆のタイプだ。
ちょっとクズっぽさのある美形イケメンの茅ヶ崎と、一人称は僕で顔と内面共に可愛さ百パーセントの彼とでは良い意味で類似点は無い。

