「いえ!こんなこと自分で言うのおかしいんですけど、よく女の子みたいだねって言われるんです。あと、女の子向けのビースリーっていうアプリの僕の推しキャラと似た名前なんですよ。だから一回だけ名前のことを言われたこともあって。さっき河合さんが名前に引っかかってたから、ひょっとして……と思ったんですけど」
違ったらごめんなさい、と笑った彼に私はつい「えっ⁉︎」と声を上げた。
私の声に一瞬、シーンと静まってしまった室内。やってしまった……と後悔していると、絶妙なタイミングで襖が開いた。
「失礼します。ご注文をお伺いします」
お店のロゴが入ったTシャツを着た店員さんがそう言うと、みんなはさっきの沈黙はなかったかのように各自飲み物を注文し始めた。
「あ、河合さん、飲み物」
「えっと……これにしようかな」
「わ、僕もこれがいいなと思ってたんです! すみません、トロピカルソーダふたつお願いします!」
私にメニューを見せてくれた茅ヶ崎くんは、にこにこと笑いながら店員さんに視線を移すと私と自分の分のドリンクを注文した。

