「あの飲み会の後、藤田さんから聞いちゃったのよ。〝私、深川さんのこと好きになっちゃいました〟って。藤田さん、美帆ちゃんが付き合ってることももちろん知ってるけど、それでも頑張るって言ってた」

「……そうなんですね」

藤田さんが真樹に気があることくらいは勘付いていたし、分かっていた。だけど、島田さんの言葉を聞く限り、彼女は私から真樹を奪う覚悟があるように思える。まあ、〝奪う〟と言っても、そもそも真樹は私のものではないわけだけど。


「これは勝手な私の勘違いだと思うんだけど、美帆ちゃんがもしかして清水くんの方を好きになったのかな? なんて、思ったりして」

「えっ⁉︎」

「あれ、違う? この間、清水くんが荷物持ってあげてるの見かけたし、だから深川くんともギクシャクしてるのかなーって」

「いや、違います!それは無いです!」

突然ぶっ飛んだことを言い出した島田さんに、私は咄嗟に否定をする。

否定をした後で、こんなに必死に否定するのも清水に失礼じゃないか。と思い直して辺りを見渡したけれど、幸いにも周りに当の本人がいることはなかった。


「あはは、そんなに否定しなくてもいいじゃない」

「だって、島田さんがそんな冗談言うから……」

「まあ、美帆ちゃんも深川くんもモテるし色々大変でしょうけど何かあったら聞くから相談してね」

「はい。ありがとうございます」

「ごめんね、邪魔しちゃって。それじゃあ」


島田さんが手を振りながら去って行く。その背中を見ながら、モテるのは私よりも島田さんの方だと改めて思った。

今のことも含めて、島田さんは人のことをよく見ているし気遣いができる。愛想が特別良いわけでも、気遣いができるわけでもない私とは大違いだ。