「───河合さん、起きて」
「ん、何……」
ぼんやりとした意識の中に私を呼ぶ声が何度か響いた。
重たい瞼をゆっくり開くと、そこには目をキラキラと輝かせた真樹の顔がある。驚いた私が咄嗟にソファーから飛び上がると、彼はまた私に少し近づいてきた。
「な、何!? 近いんだけど!ちょっと落ち着いて……」
「河合さん。ちょっと、これ見て」
ぐいぐいと近づいてくる真樹は何故か興奮気味だった。そんな彼を落ち着かせようと試みると、私の目の前にすっとゲーム機の画面がやって来た。
真樹が手にしている、最近発売されたばかりの比較的大画面のゲーム機。そこには私と真樹が出会うきっかけとなったゲームの映像が流れている。……しかし、見覚えのない背景に私は目を丸くした。
「そんなステージあった? それより、この髪型と装備すごい可愛い!何これ!」
「でしょ? これ、今朝大型アップデートされたから早速ゲットした」
「嘘、本当⁉︎ 私もする……って、あ」
慌てて自分のゲーム機を取りに部屋へ戻ろうとした私の視界にふと入ってきた真樹の顔を見て、私は大事なことを思い出した。
私、昨日、真樹にキスされなかったっけ────?
昨晩、真樹が帰ってきたタイミングで目が覚めて、唇に何かが触れた瞬間に私が瞼を開くと、目の前には真樹の顔があって……。その後、すぐに瞼を下ろしたけれど、その後の記憶はない。
そのまま寝落ちたのか、そもそもあれは夢だったのか。
どっちかは分からないけれど、真樹のこの普段と何も変わらない様子からすると、やっぱりあれは夢だった……?

