────ガチャッ

「ただいま……って、河合さん?」

玄関口からドアの開閉する音がして、ふと目が覚めた。

いつのまにかソファーで寝てしまっていたらしい私は、まだ現実か夢かもわからないようなぼんやりとした世界で真樹の声だけを聞いていた。


「はぁ、またソファーで寝てる」

大きな溜息を零した真樹が一度、自分の部屋へと戻った。それから間も無くリビングに戻ってくると、私の腰あたりにタオルケットを優しくかけた。

起きてはいるけれど、真樹がすっかり私は寝ていると思い込んでいること。それから、瞼が重たいこともあって、私はそのまま寝たふりを続けた。

今、何時だろう。なんて目を閉じたまま呑気に考えていると、すっ、と私の顔にかかっている髪が細い指先でどけられた。


「……無防備すぎでしょ」

俺だって男なんだけど、と私の目の前で呟いた真樹。

妙にドキドキする心臓の音がバレてしまわないかと緊張していると、何故か彼の吐息を頬に感じた。


────あれ、近い?

そう思ったとほぼ同時に、私の唇に暖かくて柔らかいものが重なる。

つい、驚いて瞼を開くと、やっぱりそこには真樹の顔があった。