────カチ、カチ、カチ


壁に掛けられた時計の針が、ついに21時を指した。

いつもなら、ゲームの音か、他愛もない二人の会話が響いているリビング。だけど、今日は時計の秒針の音しか聞こえない。


18時に家を出て行った真樹は、恐らく今頃フジタさんと楽しくお酒を飲んでいるんだろう。

私は、ゲームをするわけでも、ご飯も食べるわけでもなく、ただ黙ってリビングのソファに三角座りをしていた。


「……はあ」


毎週、金曜日と土曜日の夜は、ここに二人並んで座って、テレビゲームをするのが日課だ。

珍しく真樹のいない土曜の夜は、なんだか少し寂しくて、今頃楽しんでご飯を食べているであろう二人を想像すると苛立ちのような感情すら湧き上がってきた。


「……バカ真樹」


目の前にある膝に顔をうつ伏せ、一人小さく呟くと、私は時計の秒針の音を聞きながら、ゆっくり瞼を下ろした。