「……河合さん?」

「へ?」

「どうしたの、ぼうっとして」

隣から私に声をかけてきた真樹は、心配そうな表情を浮かべて私の顔を覗き込んできた。


「ううん。何もないよ」

笑ってそう答えると、真樹は「そう? なら、いいけど」と言ってまたスマホに視線を向けた。


「……あ、そういえば」

「ん? なに?」

「今日、18時から受付の……フジタさん?だっけ? あの子とご飯行ってくる」

「……え?」

平然と、いつもと変わらない表情でそう言った真樹に、私は大きく目を見開いた。

受付のフジタさんは、昨日の飲み会で真樹にアピールをしていたあの子。明らかに真樹に気がある。そんな子とご飯に行くなんて、一体彼は何を考えているんだ。


驚いてスマホの操作をする手の動きがピタリと止まってしまった私をよそに、通常運転でスマホゲームの操作をし続ける真樹。


「分かった」

どうしてか段々と苛立ちが募ってきた私は、一言だけ真樹にそう放ち、ソファから立ち上がった。