「もう!なんなの!バカにしないで……」
恥ずかしくなってそう言った私の目の前に、気づけばまた彼の顔が近づいてきた。
近づいてきたと思えば、一瞬で私の唇を奪って離れた彼の唇。私は、瞬きをすることを忘れてしまいそうなほど目を見開いて驚いた。
「隙あり」
「なっ……!」
悪戯に笑いながらゆっくりと立ち上がった彼が、私に右手を差し伸べる。
「一緒にゲームしよっか。美帆」
彼は、私が何をすれば喜ぶかということも怒るかということも知っている。
今だって、私が喜ぶだろうとゲームをすゆことを提案したのであろう彼の手のひらで転がされている私は、どうやら先に彼に攻略されてしまったらしい。
この手を取れば、完全に彼に負けてしまう気がする。だけど、本能には敵わないし、もうそれはそれでいいのかもしれない。
「……私も真樹とカートレースしたい」
「はは、うん。好きなだけ一緒にしよ」
私はゆっくり立ち上がり、彼の右手をとった────。

