社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜


「ゲームも、何か茅ヶ崎には負けてられなくてさ。だって茅ヶ崎、明らかに河合さんのこと狙ってるでしょ」

「え、いや、茅ヶ崎くんは多分、本当にゲームを一緒にしたいだけだと思うけど……」


茅ヶ崎くんが私のことを好きだという噂は、正直なところ間違っているとしか思わない。しかし、そのことであんなにも対抗心を燃やしてゲームをしていた彼が珍しく子供っぽくて、私は少しだけ口角が上がってしまった。

ヲタクというのは不思議なもので、私も彼も、自分以外の人とゲームをしていることにさえ嫉妬心を抱いてしまい、ただのゲームといえどもライバルであれば子供のように本気になってしまうらしい。

私たちは、恋人になってもヲタク素質は当初から変わらずもっているようだ。


「河合さんは、男ってものを分かってないな。茅ヶ崎だって男だってこと忘れたらダメだよ」

「それは、分かってるけど……」

「本当かなぁ」

「もう、私だって大人なんだからそのくらい分かってる」

そう主張しても、目の前の彼は複雑な表情を浮かべている。

そんなに心配しなくたって、私と茅ヶ崎くんがどうこうなる事なんて無いのに。もし、そうなりかけたとしても私には真樹しかいないのに。


「……ま、いいか。何かある前に結婚しちゃえば」


「えっ?」


彼の複雑な表情が、吹っ切れたような明るい表情へと移り変わった。その瞬間に、彼の口から出てきた言葉に私は目を大きく見開いた。