「茅ヶ崎くんとするのも確かに楽しかったし、それも無いわけじゃないけど……そうじゃなくて」
「そうじゃなくて……?」
「自分で言ったじゃん。〝茅ヶ崎ばっかり構って俺とゲームしなくなるのは無しだから〟って。それなのに、私のことは放置したじゃん」
「え?」
「それに、どうして私が断ってたのに今日のこと許可したのよ。茅ヶ崎くんとここでゲームしたくなかったってわけじゃないけど、二人予定の合う休日に真樹とゲームするの、いつも楽しみにしてたのに」
ぼそぼそ、と独り言でも呟くように小さな声で発した。こんなの、聞こえていたって恥ずかしいから真樹の耳に届いていなくても良かった。
だけど、目を丸くしたあと微笑んだ真樹の表情を見ると、どうやら私の言葉は全て聞こえていたらしい。
彼は、ゆっくり私の頬まで手を伸ばすと優しく親指で頬を撫で、反対の指先を私の唇の上に置いた。
「まさか、この口からそんな可愛い言葉が出てくるとは」
時々、私の前で見せてくれる外行きではないとびっきり優しい表情。私は、彼のこの表情に弱い。
どきどきと大きく高鳴り始めた心臓に、私は息をすることを忘れてしまいそうなほど緊張した。
「ごめんね。茅ヶ崎が、家に呼べないなら河合さんのお昼休みもらうとか言うから、それも何か嫌で」
確かに、真樹の言う通り茅ヶ崎くんは〝深川さんの家でもダメだって言うなら、会社でのお昼休みの時間くらいは毎日河合さんの時間もらいます!一緒にゲームしたいんです!〟と言っていた気がする。
それを免れるために、真樹は今日一日自宅でゲームをすることを許可したのか。

