何故か真樹が対抗心を燃やして私のリモコンを取り上げてから、かれこれ一時間以上、茅ヶ崎くんと真樹がカートレースのバトルを続けていた。
何だかんだ言いながら、楽しそうにレースをしている二人を少し離れた場所から眺めているだけの私は、だんだん眉間にシワがよってきているのが自分でも分かる。
「深川さん、このレースは貰いました!」
「いや、まだ終わってないから。絶対抜く」
「絶対抜かれません!」
どうして今、真樹と茅ヶ崎くんがゲームをしている様子を私がこうして眺めているんだろう。
今日は深川くんと私がゲームをするという予定だった。そのはずなのに、今ゲームをしているのはあの二人だし、どうして私が放置されているんだ。しかも、心なしか楽しそうにしているようにも見える真樹にも段々腹が立ってきた。
〝茅ヶ崎がゲーマーだからって、茅ヶ崎ばっかり構って俺とゲームしなくなるのは無しだから。それだけは本当に怒るから〟
なんて、自分はそう言ったくせに私のことは平気で放置するじゃないか。私だって、真樹ともゲームしたいのに。
心の中でぶつぶつと不満を漏らすけれど、そんな私の気持ちを知る由もない二人はこのまま更に一時間以上対戦を続けていた。

