社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜




「あ!ちょっと待って、茅ヶ崎くん!」

「河合さん、頑張ってください!一緒にワンツーフィニッシュしましょう!」

「ありがとう茅ヶ崎くん!頑張る!」

手始めにカートレースのゲームをし始めた私たちは、30分はそのゲームに夢中になっていた。

優しい茅ヶ崎くんは、真樹とは違って私をいじめることは全くない。敵でありながらもサポートをしながら共にゲームを楽しんでくれている。


「あ、あともう少しです!頑張って!」

「うん!頑張る!」

基本的に私のことをいじって楽しんでいるタイプの真樹とは違って新鮮だなぁと思いながら、ふと後ろを振り返る。


「真樹、暇だったら戻っていいよ」

流石に部屋に戻っているかと思った真樹が、テーブルに頬杖をつきながら暇そうにこちらを見ていた。

心なしかつまらなさそうに見えた彼に気を遣ってそう言ったのだけれど、その一言に何故か彼はさらに顔をしかめた。


「ちょっと美帆、茅ヶ崎と対戦したいから代わって」

「えっ? ちょ、待ってよ真樹……」

突然椅子から立ち上がった彼は、私の目の前までやってくるとリモコンを取り上げてきた。


「深川さん、ゲームするんですか?」

私から取り上げたリモコンを手に、再びリビング中央のイスに戻った真樹に茅ヶ崎くんがそう問いかけた。

彼は、確か真樹が根っからのゲーマーであることを知らないはず。真樹も私と同様、社内にその事実が広まるのを避けたいと思っているのだから、ここでゲームを一緒にしてしまうのはまずいんじゃないか。そう、思っていたのに。


「え? いつも美帆としてるよ? あ、あと茅ヶ崎さ、本気出さないと俺には勝てないからね」

何故か対抗心を燃やしている様子の真樹は、自分がゲームをすることも、自分がそれなりに強いということも自分から言い出してしまった。