急ぎ足で玄関にやって来て、ドアを開く。すると、ドアの向こうから茅ヶ崎くんが顔を覗かせた。
「こんにちは。河合さん」
「茅ヶ崎くん、いらっしゃい」
茅ヶ崎くんが「お邪魔します」と言って靴を脱ぎ終えたのを確認すると、リビングへ続く廊下を歩きだす。
リビングに何か片付け忘れたものがなかったかと思い返しながらリビングの扉を開き、茅ヶ崎くんを迎え入れた。
「いらっしゃい。少し散らかってるけど、ゆっくりしていってよ」
リビングの扉を開くと、椅子に腰をかけている真樹が茅ヶ崎くんに向けてそう言った。
てっきり既に部屋に戻っていると思っていたのに、会社にいる時と変わらない爽やかな笑顔を浮かべている真樹に私は睨みを効かせた。
「はい。ありがとうございます」
「美帆、お茶用意するからゆっくりゲームしてて」
「……あ、ありがと」
彼は私の睨みにも全く怯むことなく、優しくて気の利く恋人をいつもより過度に演じている。
なんだかやりづらいな、と感じながらも、茅ヶ崎くんと共にソファーへ腰をかけた私は早速ゲームを始めた。

