「河合さん自分で分かってないかもしれないけど、ゲームしてる時の表情、全然いつもと違うんだよね。職場では何でも一人で片付けようとしてるから言動はもちろん、表情にも隙がない。俺からすれば、愛想笑いもすごく分かりやすいし」

「なっ……」

「それに反して、ゲームしてる時の河合さんはすごくよく笑うし、悔しそうにしたり、たまに子供みたいに怒ったりするでしょ?」

彼の言葉には、確かに心当たりがあった。

仕事に関しては意識して一人で片付けようと思っていたわけではなかったし、隙を作らないように意識していたつもりもない。だけど、確かに好きなことをしている時の私は普段とは違う。

こんな歳になって恥ずかしいけれど、ゲームに負けると悔しくて何度も真樹に相手をさせたり、怒ったりしたこともあった。


「そういう河合さんの隙、俺だけが知ってたのになぁ、って」

「えっ、と……」

まさか、これは嫉妬?

有り得ないと思っていた展開に少し戸惑ったものの、真樹が嫉妬をしているという事実に嬉しさすら感じている私は、本格的に恋煩いにあっているみたいだ。


「うわー、ごめん。やっぱ今の無し。流石にダサすぎた」

髪をくしゃくしゃとかき乱した彼は、私に背を向けてキッチンの方に向かおうとした。私は、それを急いで服の背中あたりを掴み止めると「私は、ダサくないと思うけど!」と反射的に発していた。