────そう、思っていたのに。


「河合さんさ、お昼休みに茅ヶ崎とゲームしてたでしょ」

仕事を終えて自宅に帰ると、ソファーに腰をかけている真樹がそう言って私を見た。どうやら、彼はご立腹の様子だ。


「ビースリーのコツを教えてあげてただけだけど……って、それより!メモとか資料置いてたのに何でゲームしてたって分かったの⁉︎」

「いや、側に置いてあっただけでずっとスマホと睨めっこしてたじゃん。あんなのカモフラージュだってすぐ分かる」

「嘘でしょ……」

「詰めが甘い」

怒っていたかと思いきや、ふっ、と口角を上げて笑った真樹。

なんだ、怒ってなかったのか。と安心してひと息つくと、ソファーから立ち上がった真樹がこちらへと向かってやって来た。


「あと、これ」

無表情のまま私に詰め寄って、私の頬へ手を伸ばした。

彼の指先に触れられた瞬間、つい、びくりと反応してしまった。小さく口角を上げて目を細めた彼は、どうやらそれを見逃さなかったらしい。


「これ……って、ほっぺ?」

彼が指す〝これ〟とは何か。それを当てようと試みるけれど、彼は「違うけど、ちょっと惜しいかな」と言って笑う。