「ううん、別れてないよ? その噂、やっぱりすごい広まってるんだね」
笑ってそう返すと、心なしか残念そうに笑った茅ヶ崎くん。
「今朝、河合さんのこと苗字で呼んでたので本当にそうなのかと思っちゃいました」
「あはは。そういえばそうだったね」
「あの……そういう噂もありますし、僕、こうやって河合さんと二人で話してたらまずいですかね?」
突然、眉尻を下げて不安そうな表情を浮かべる茅ヶ崎くん。彼は周りをキョロキョロと見渡し、私と真樹の噂がヒートアップことを心配している様子。
「大丈夫だよ。そのくらい」
あんな噂のことは気にしてないから、と付け足して笑ったけれど、それでも茅ヶ崎くんの眉尻は下がったまま。
「違うんです。その事もそうなんですけど、僕と河合さんが仲良くしてたら、深川さんが良く思わないかなぁって……」
彼は、まるで弱った子犬のように不安そうにしている。
真樹が嫉妬するのではないか、ということを彼が言っているのは分かったけれど、果たして真樹は嫉妬なんてするのだろうか。
「真樹は、あんまり嫉妬とかするタイプじゃないだろうし大丈夫大丈夫。それに、ゲームの話してるだけだし、何もやましいことないじゃん」
今思えば、本当の意味で恋人になれたあの日に清水とよく話したり、茅ヶ崎くんと飲み会で良い感じだったことを聞いた彼は少し怒っているように見えた。
だけど、ちゃんと真樹が好きなことは伝えたし、何より茅ヶ崎くんから私に対して異性としての好意は全く感じない。ゲームの話をするだけなら、あまり他人に執着しない真樹だ。何も思わないだろう。

