「まずは、第一に時間をうまく使うこと。ログインボーナスを毎日貰うのは大前提ね。で、あと、イベントの時なんだけど……」
あの後真樹が去って行くと、隣にいた茅ヶ崎くんは「今日の休み時間にレベルを上げるコツを教えてください」と私に頼みこんで来た。私は、そのお願いを快く聞き受けると、お昼休みに茅ヶ崎くんと二人スマホと睨めっこしていた。
周りに決してゲームをしているとバレないよう、メモやペン、資料を用意してあくまで打ち合わせをしているような雰囲気を醸し出す。その念入りなカモフラージュのおかげか、私達二人に近寄ってくる人は誰一人としていないし、怪しまれてもいないはず。
「本当、今回のイベの茅ヶ崎イケメンすぎてどうしよう」
「本当ですよね。男でも惚れるレベルです」
「ほら見て、これ。この茅ヶ崎前回のイベでかなり課金してゲットしたの」
「うわああ!それは欲しい……!復刻ガチャとかしてくれないかな……」
ひたすらスマホと睨めっこして、お互いの画面を見せ合う私と茅ヶ崎くん。しかし、しばらくすると茅ヶ崎くんの視線がこちらへと移った。
「あの、河合さん」
「ん? なに?」
「深川さんと河合さんが別れたっていう噂をちょっと前に聞いたんですけど……」
真相はどうなんですか? とでも言うように私に視線を向けてくる彼に、私はゆっくり首を横に振った。

