先輩の綺麗な指先が、二枚の楽譜の上を滑っていく。


 ダメだ。緊張しすぎて、ちゃんと答えられないよ……


 頭の中が、先輩でいっぱいになってる。


 どうしようかと顔をあげて先輩を見ると、同じくこっちを見ていた先輩と目があった。



 「あ、えっ、と……」



 額の汗を拭う振りをして、顔を隠す。


 な、なんか、すっごく恥ずかしい……


 頭がよく回らなくて、ぐるぐるしそう。



 「あ、じゃあさっ、じゃんけんしよう!」 



 何と答えれば良いかと考えていると、先輩が一つ提案を出した。



 「じ、じゃんけんですか?」



 楽譜から顔をあげて、先輩を見る。