「あ、こ、駒井先輩」



 先輩は、担当しているテナーサックスをそばの机へ置くと、しゃがんで荷物をまとめていた私の前に、同じようにしゃがみこんだ。


 距離が近くなって、体温が高くなるのがわかる。


 ツー、と、首筋に汗が垂れた。


 顔が赤い。


 先輩はそれから、数枚の楽譜を差し出してくる。


 そのうちの一枚を、先輩が指差した。



 「これ、いま紗世ちゃんが持ってる楽譜なんだけど……同じのだとつまらないでしょ?」


 「いや、別に……そんなことない、です……」



 すぐ近くで、先輩の声がする。


 それだけでもう叫びそうなのにっ。