「お疲れさまでした~」



 夏の、吹奏楽部の部室。


 残念なことに冷房は壊れて、熱気がこもっている。


 終礼が終わり、荷物を片付けた先輩や同級生は、それぞれに帰っていく。

 

 「紗世~、先行ってるね?」


 「あ、うん、いいよ。私もすぐ行く!」



 猫型をした丸いリュックを背負った莉子の背中に返事をすると、その向こうに、こちらへ向かってくる人影を見つけた。


 駒井先輩……


 私の、好きな人。



 「紗世ちゃん」



 高鳴る胸をおさえて視線をそらそうとすると、駒井先輩が、私の名前を呼んだ。