「え」


「なに阿呆みたいな顔してるんだ。後輩の願いを無下にするほど、俺は無慈悲じゃないぞ。」



っもうほんと、なんなの。
後輩としてってことは分かってるんだけど。

こんなの、どうしたってときめくに決まってる。



「ほら、帰るぞ。」


鞄を掛けて振り返る東先輩が、素敵すぎて。
顔が熱くなるのがわかった。


こりゃ、まともに受けたら私倒れる。


「せんぱーい、ついでに私と愛の逃避行しませんか?」


「遠慮しとく。」



ほんと、つれないのに。
東先輩の優しさに、格好よさに、どんどんはまってしまう。

好きが、かさを増していく。
これ以上溢れたら、きっと先輩を困らせちゃうから。

だから今日も、きつく蓋を閉めて、こう言うんだ。



「─もう、つれないなあ。」