それと同時に、その左手薬指で光る指輪がギュッと私の胸を締め付けた。


あの指輪の相手は、三島くんのこういう姿をきっと沢山沢山知ってるんだ。


その上、別れた後も想われてるとか…、どれだけ幸せ者だよ元カノさん。



「三島くんの元カノさんて…どんな人?」


日誌にシャーペンを走らせていた三島くんの手がピタリと止まる。


しまった。


つい心の中の声が漏れてしまった。


「…何?急に」


「あー…いや、ごめんね。つい、三島くんの指輪が目に入って。それ、ペアリングだよね?」


「…うん。そうだよ」


三島くんは、いつも通り穏やかな口調でそう答える。


だけど、どこか悲しげな瞳が私の心をざわつかせた。



何でそんな顔するの?


もう一年以上も前に終わった事なんでしょ?


そんな顔するなら、何で別れたりしたの?


「三島くんは…今でも元カノさんが…好き?」


三島くんは、そんな私の質問に一度目を丸くする。


それから、ゆっくりと目を伏せて。


「好きだよ」


そう言って、寂しげな笑みを浮かべた。


身体中の血液という血液が、頭に上っていく。


怒りに似てる。だけど、泣いてしまいそうな時にも似てる。