唇をきゅっと結ぶ。


 下駄箱まで急ごうと顔をあげると、そこには、一階の廊下があった。


 ここで昨日、先輩は、好きな人に告白していた。


 後ろから呼び止めて、想いを__私はたまたま現場を目撃してしまったけど、その後は、怖くて聞けなかった。


 想像はできる。


 きっと話というのは、この事だろう。


 ずきずきし始める心を落ち着けて、三年生の下駄箱を覗く。


 靴には履き替えず、上履きのまま、先輩はそこにいた。



 「先輩……?」


 「わっ、あ、朱音ちゃん……」



 慌てたように顔をあげた先輩。


 目が、少しだけ赤いような気もした。


 それに驚いて、咄嗟には言葉が出てこない。