―――春


花粉症の私にとって、最も辛い季節。


楽しいお花見だって、鼻水をかむだけで終わる。


「……くしゅんっ」

「こら菜摘ー、新しい制服に鼻水つけないでよ?」

「う、うん……っくしゅん!」

花園 菜摘 (はなぞの なつみ)


今日から高校1年生。

真新しい制服に身をつつみ、部屋にある大きな鏡の前でリボンとロングの髪を整える。


「……よしっ」

私は気合いを入れて、階段を降りた。


「行ってきますっ」

「気を付けてねー、あとで行くから!」


お母さんの声が後ろから聞こえて、私は少し振り返る。


「じゃあねっ」

私は軽く手を振り、坂道をおりていく。


今日は高校の入学式。

15分ほど歩いて、校門が見える。


「……友達できるかな」

内気で言いたいことも言えない私は、友達なんてできるわけがない。