水の中で


 水の中を帰路についた。
 町工場から流れ出したらしい廃油が漂う水面にには靴や木切れが浮かび、立木の枝に引っかかって盛り上がっていた。畑と道の区別がつかない泥濘の中を、隆は我武者羅に歩いた。
 弘美の仕草のあれこれが浮かび上がってきた。公民館で出合ったとき、俺に向かって来た姿。母親にかけよる幼女のようだ、と愛しく思った。が、知らない人の中にいると淋しくなるの、と言う弘美のセリフは、俺ではなく、誰でもよい、と言ったのだ。
 無念だ。
 あいつはが、親しいのは知らなかった。
 あいつは予習復習を欠かさない、くそ真面目な奴だ。卒業したら大企業へ入り、そこそこの地位につくだろう。
 弘美の支えには、頃合いだ。
 こみ上げるものに歯を噛んで堪えた。
 それにしても、あいつが、あそこにいたのは、弘美が連絡したのか、まさか、あいつは、弘美の身内かも、知れない。
 自治会の面々が災害対策委員会を立ち上げ、探していることには気づいていない。自治会常任委員の活躍は自己陶酔だ。それに煽られて、水の中を歩き続ける俺は。
 目の前に丸太が漂って来た。避難する住民を襲った丸太だ。
 隆は拳を固めて、突いた。