職場恋愛

「航、明日何時から?」

「オープンだよ」

「一緒だ!!よろしくお願いします…」

またミスして怒られて迷惑かけないようにしなきゃ…。

「こちらこそ」



優しく微笑む彼はまさに王子様。
ついつい見惚れてしまう。

目が合ったらすぐそらすけど。




「ごちそうさまでした」

手を合わせて満腹のお腹を見る。
うん、すごいお腹。


「ごめん、トイレ行って来る」

ゆっくり立ち上がった航に手を振る。

「行ってらっしゃ〜い」


明日やだなー。
どうしたらノーミスで乗り切れるだろう。
できれば航とは別の仕事がいいな。
同じだとなにかしら迷惑をかけてしまいそうだから。


「お待たせ。行こっか」

お戻りになった王子様に促されて立ち上がり、財布を取り出した。

でも航は「ごちそうさまです」と言葉を残してスタスタとレジを通り過ぎてしまい、え?え?となった。

「無銭!?」

「お支払いただきましたよ」

レジにいたお姉さんに聞くと航の方を見ながらそう答えてくれた。

「え!?ちょっと!」

まさか、トイレって。

「待って!払います!」

追いかけながら千円を差し出しても受け取ってもらえない。

「受け取ってください!」
「っちょわぁ!」

急に振り向くものだから変な言葉が出た。
今の、何語?

「敬語はだーめ」

「えぇ…そっち…?」

「それと、女の子は男の前で財布を出してはいけません」

そっちだって敬語じゃん!!

「…と、とりあえず今回はごちそうさまですってことにするけど!次は全額私が払うから」

「だーめ」

いたずらっぽく笑う彼はすごく楽しそう。
楽しそうで何よりだけど………。
はぁ。
敵わないな。