翌日出勤すると周りの視線がいやに刺さった。

なに?

「荒木、ちょっと来い」

最悪。
朝っぱらから國分さんの説教か〜。


國分さんの後を付いてたどり着いたのは喫煙所。
私はタバコの煙を吸いながら説教されるか。


カチッ

「やめたら?」

ハー、と煙を吐き出して1番に言われた言葉。

今更驚きもしないけど流石にイラっとする。

どんな思いで続けて来たか分かってんのか、このクソジジイ。
2ヶ月だけど。


「昨日、逢坂18時上がりだったんだよねー。上がったの20時。迷惑かけてる自覚ある?」

「…」

上がれって言ったのそっちじゃん。

「過労死とか問題になってるこのご時世にさ、逢坂1人にだけ残業させたくないんだわ」

なにその特別扱い。
私だって残業したことあるし、他の人もたくさんしてる。

「出来損ないの新人のために逢坂を使うのはすげー嫌なんだわ」

「…」

教育力の問題もあるでしょうよ。

「ま、辞める気になったらすぐ言え。喜んでやめさせてやる」

嬉しそうにそんなことを言って戻って行った國分さん。
大っ嫌い。

逢坂先輩はいいなぁ。誰からも好かれててやりやすいことこの上ないでしょうね。



なんで私ばっかり。

悔しい気持ちが溢れて来て2ヶ月間堪えた涙が溢れた時、

ガチャ

扉が開いた。


こんな時に誰!?


「あ…逢坂先輩…」

「お疲れ。泣いてんの?」

「…別に…コンタクトです」

「ふーん」

カチッ

逢坂先輩もタバコ吸うんだ。

「…」

「…」

「もう少し、笑えば?」

なに、急に。
逢坂先輩も説教?

「笑ってますよ」

「もっと笑えないの?」

ちやほやされてる人には分からないだろうけど、これでも精一杯笑ってる。
1年しか変わらないくせに、偉そうに指図とかありえない。

「…」

「仕事、楽しくない?」

楽しいわけないでしょ。

「はい」

「そっか。楽しくできるといいね」

なにその他人行儀な感じ。
他人だけどさ。

ちゃんと教えてあげられなくてごめんねとかないの?

嫌い。逢坂先輩も國分さんも嫌い。