「ん?してないけど、腕は引っ張った」
航の予想外な発言に私とつり目さんは目を丸くした。
りんちゃんさんもおかしな表情だ。
「ならいいです」
「え?」
「え?」
航って、なんかズレてる…?
つり目さんもきっとそう思ったんだろう。
キョトンとしている。
「お咎めなし?ゆーちゃん泣かせたんだよ?え?」
「まぁ……俺以外に泣き顔を見せたのはアレですけど………」
やっぱりズレてる。
いや、私、大切にされてない!?
つり目さんに迷惑かけたから本当は腹わた煮え繰り返ってたりして、嫌われたとか?
どうでもいいとか…?
「奏太がこうちゃんを気に入る理由が分かった気がする。変わってるね、こうちゃん」
「そうですか?変人ってよく言われるんですよね」
「奏太も変人だからなのか、変人同士でつるむことが多いの。しまもつり目も高木ちゃんも、みんな変人でしょ」
「えっそしたらりんが1番変人なんじゃね」
「うっさい!!あたしは正常よ」
話がどんどん逸れていく…。
「結?どうかした?」
航の表情を伺おうとしたら気付かれた。
「怒って…ないの?」
「何を?」
何を…って。
そりゃ。
「つり目さんを困らせたらダメでしょって」
「へ?」
「あ、俺?むしろごめんね、ゆーちゃん」
あれ?
「え?怒ってるから喋らないんじゃないの?」
「全然?つり目さんが一緒に入ってくれてよかったなーって考えてただけだよ。島田は先に行っちゃうだろうし、山野さんは意外とSだし…、つり目さんでよかったーって考えてたらぼーっとしてたのかな」
「…そ、そうなんだ…」
なんだ、全然怒ってないじゃん…。
「でも、」
「は、はい!」
「泣き顔、可愛いんだからもう誰にも見せないでよ」
なんでこう、恥ずかしいセリフを先輩方の前で言えるのか…。
不思議でなりません。


