職場恋愛

3人では入れないらしく、必然的に山野さんも1人で入る羽目に。


怖いから私とつり目さんを先に行かせてもらいたいとお願いしたから、山野さんは1番最後に入ることになった。




入り口に注意書きがあったんだけど、300メートルのやや長めコースだから途中リタイアする場合は緑色の『EXIT』を探して出てください、と。

途中リタイアするくらい怖いんですか。



暗くて何も見えない道を、前を歩くつり目さんの足音頼りに少しずつ進む。


まじで、心臓いかれそう。
こんなにドキドキするって、國分さんや店長代理に怒られる時くらいだよ。
いや、それよりドキドキしてるかも。
本当に怖い。



「ゆーちゃん付いて来てる?」


「はい!絶対置いていかないでください」


「俺は優しいから置いてかないもーん」


「お願いしま………あぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」


「え、何?」



悲鳴というより叫び声というかなんというか、強烈な声が私のお腹から出た。


なんでかって?

謎の手が私の足を掴んだからだよ。



「いやぁああああああああ無理無理無理無理無理!!!出口探してください無理です…無理です…こんなの無理……」



肩にまで手を置かれて更に叫ぶ。

暗くてつり目さんの顔は見えないけど、息遣いとか、声で、多分すごい心配している気がする。



「大丈夫?なんかいた?」


「なんで私だけ………っきゃああああああああああああああああーーー!!!」

「うぉっ!そんなとこに立ってんなよ…ビビるだろ」


私の悲鳴とは裏腹に、つり目さんは至って冷静ならしい。


多分、このお化け屋敷中に響いたんじゃないかな、私の悲鳴。


だって、私たちの目の前に、傘のおばけが立ってるんだもん。


「うぅう…怖いぃ………怖いよぉ……うぁあ………」


荒木結、先輩の目の前で号泣。
暗いからあんまり見えてないと思うけどね。


「ちょっと、泣いちゃったじゃん。出口どこ?」


傘のおばけに聞くつり目さんはどうかしてる…。


「す、すみません…少し進んだら左側に見えます…」

傘おばけも答えてるし…。



「ほら、行こう」


腕を引っ張られて泣きじゃくりながら前に進んだ。