職場恋愛

ゴツーーーンという音が車内に響いたのと、私の頭にちょっとした痛みが走ったのは同時だった。


私の頭が音を立てたのではなく、航が頭を強打したのだ。

勢いよく横顔にアタックしたから。



「…結?」


痛い、と言いながら私に視線を落とした航。


「ッブ!!!」

「ギャハハハハハ!!!」


うるさい2人が大爆笑し、山野さんが状況が分からないというように覗き込み、私の目には涙が溜まった。






「何、今の音」


運転席のりんちゃんさんも心配そうに呟く。


「荒木ちゃん…クク…やべえ、超面白い」

「ゆーちゃん……ブフッ、何やってんの」


笑いを堪えながら、でもやっぱり爆笑する2人。

恥ずかしさと、申し訳なさとで一気に涙が溢れてきた。


「うぅ…ごめんなさい」


「結、なんで泣いてんの?痛かったの?」


私の頭を撫でながら聞いてくれるけど、私が痛いわけないじゃん。
突撃したの、ほっぺただったし。


「ごめんなさいいいい〜」


私が大号泣する中、2人は大爆笑、山野さんカップルはハテナが咲いて、航は私を宥めてくれている。



「めっちゃいいの撮れた」


笑いながら島田さんが見せてきたのは、私が寝ている彼氏を乱暴に起こそうと突進するだけの動画。

写真じゃなかったの…?
こんなの、ただの凶暴で野蛮な女だって言ってるようなもんじゃん。


「最悪………………。飛び降りてもいいですか!!!ごめんなさい!航様ごめんなさい!!!」


「撮るなよ」


航が島田さんに消して、と言ってくれたけど、笑っているだけ。


「お前の寝顔撮ろうとしたら突っ込んできた」

笑い終えた島田さんは山野さんにスマホを渡しながら航に言った。
やめて、見ないで、山野さん。


「ゆーちゃん、どうした」


ほら、山野さんもすっごい笑い堪えてる。


「……うぅ……………う…うぁあ……」


「そんなに泣かないで」


頭突きされた本人も笑いを堪えてるし、どうしたらいいの…。