side 國分

インカムでいくら呼んでも反応しない荒木に苛立ちを覚えながらなんとなく事務所のキーボックスを見ると、普段は滅多に使われない倉庫の鍵がなくなっていることに気付いた。


スペアキーを持ってその倉庫に向かう途中、新人の井上、菊池に声をかけられた。

「國分さん、荒木さんインカム持ってなかったから取りに行ったのかもです」

あ?いつの話してんだ。

「何時間も前からいねーんだからそんなんじゃねーだろ」

それにあの馬鹿はインカム付けてねーことに自分で気付けるとも思えない。

馬鹿だからな。


問題の倉庫に着いて鍵を開けて驚いた。
まさかとは思ったが。


「荒木」


ドアを開けた瞬間に温風が出てくる程暑い部屋で倒れている荒木を見つけて駆け寄る。


「おい、しっかりしろ」

肩を揺らすと半目開いて「トイレ行きたい」と呟いた荒木。

急いで従業員用トイレに連れて行く。

用を足したフラフラの荒木を事務所まで連行してとりあえず汗を拭わせる。

保存食用の水を飲ませて落ち着かせてから話を聞いた。


「朝、ロッカーを開けたら制服にケチャップが付いてて。
井上さんに國分さんが呼んでると言われて倉庫に行ったら鍵を閉められて。
現在に至ります」

今が17時ってことは6時間くらいあそこにいたってことか。


「見つけるのが遅くなって申し訳なかった。
今日は送るからもう帰って明日、明後日は休んでくれ。後で井上たちに話を聞く」


まだ意識が朦朧としている荒木にそう告げ、帰宅の準備をさせた。