side 航

AM9:50
國分さんからの電話で目が覚めた。


「もしもし」

『あ、悪ぃ寝てたか?』

ええもちろん。

「はい」

『悪い悪い。お前今から来れるか?』

「出勤ですか?」

『いや、制服だけでいい。荒木に貸してやってくれ』

家が近いからか。
しょうがない。

「分かりました。30分くらいで行けると思います」

通話を終了して即着替えて制服を袋に詰めた。
あくびをしながら家を出て駅に向かった。




会社に着いて休憩室を覗くと荒木さんが難しい顔をして座っていた。

「おはよ。制服持って来たよ」

「あ!逢坂さん!!!本当にごめんなさい!すみません!申し訳ないです!今度必ず埋め合わせします!」

「大丈夫だよ、そんなに気にしないで」

「本当にありがとうございます!ごめんなさい!」

何度も頭を下げてくる荒木さんを見て思わず笑ってしまった。

「分かったから、行っといで」

ずっと謝って来そうな勢いだったから半笑いで背中を押してロッカーに行かせた。




替えの制服置いとくべきだよな〜なんて思いながら帰宅してまたすぐに寝た。

PM00:25

今度はなんだ…。
再び國分さんの電話で目が覚めた俺。

「悪ぃ、また起こしたか」

「大丈夫です」

「荒木に制服渡してくれたんだよな」

「?…はい」

「あいついないんだよ」

………はい?

「トイレとかではなくてですか?」

「2時間くらい行方不明」

行方不明って。

「電話してみます?」

「ロッカーから振動が聞こえたから荷物はあるんだと思う」

まじか。

「……………」

「まぁこっちで探すわ。何回も悪いな。おやすみ」

おやすみって、寝れねーし!