side 結

「あなた新人?説明の仕方がめちゃくちゃで何も伝わってこないんだけど!」

「申し訳ございません。普段は担当外で…」

「言い訳なんか聞きたくないわよ!分かんないなら分かる人を連れて来なさいよ!頭を使って!子どもじゃないんだから」

私の拙い日本語では何も通じなかったらしく、家電量販店勤務2ヶ月目の私はほぼ毎日お客さんや上司、先輩から説教されている。

今日もそんな毎日の中の1日。

事務室まで走ってる途中、誰かと肩がぶつかってしまった。

「わっ!ごめんなさい」

顔も見ず謝る。

「また。ねぇ、あなた前もぶつかったよね?喧嘩売ってるなら買うけどその前にここは職場。お店なの。お客様がいるところで全力疾走して人とぶつかるって馬鹿なの?私だからまだいいけどお客様とぶつかって万が一にも怪我をさせてしまったらどう責任とるの?」

「あ、あの、ごめんなさい、わざとじゃないんです、急いでて」

「あなたの事情なんかどうでもいい!ここはあなただけの場所じゃないの。お客様が第一なの。お客様のためにある場所をあなたが走り回っていい理由なんてないんだから!」

10年くらい働いてるらしい岩木先輩はいつもごもっともなことを言ってくる。
でも、だからって私にも事情があるのは事実。
早くあのお客様の対応をしてもらわないと。

「本当にすいません。でも、急いでるので…」

強引に切り抜けて事務所まで早足で歩いた。





ノックしてからドアを開けると不機嫌な上司がいた。

「國分さん、お客さんの対応をお願いしたいんですけど」

早く行かないと帰っちゃう。
そんな思いからつい早口になってしまう。

「はあ?つかお前どっから来た?」

いきなり大きな声を出されてびっくりする。

「えと…7階フ…」

7階フロアと言おうとして遮られてしまう。

「てめぇの腰に付いてんのはなんだ!?」

あ…………。
走ってこなくても良かった…。

「…インカム…」

「インカム付けて走り回ったのか?アホか?お前」

「……」

「時間を無駄にしてまで俺に直接言いたかったことはなんだ?あ?」

「…あ、えと、エアコンを買いたいというお客さんに機能を説明したら怒られてしまって、代わりに分かる人を呼んで来いって…」

さっきの状況をそのまま伝えると大きな声で笑われた。


「お前、どこまでアホなわけ?エアコンの説明ができる人間は俺しかいないと?
7階フロアにエアコン専属の社員もいるし、お前の同期にもエアコンが得意なやつがいるだろ?脳みそん中空っぽか?」

身体中を冷や汗が流れて固まる。

最悪。

「あ、えと、じゃあ戻ります」

棒読みでドアの方に振り返ると止められた。

「お前はもう帰れ。邪魔。
國分だ、エアコン担当ー」

私に暴言を吐いてからインカムでエアコン担当を呼んだ國分さん。

「お、逢坂、多分エアコンフロアに荒木を待ってるお客様がいると思うんだ。対応してくれ。ん?今対応中か?悪い、荒木帰すからそのまま対応頼む」


逢坂先輩。
國分さんのお気に入りだ。