「…で、最後にまとめて終わり」
起承転結の転まで一緒に考えた私たち3人は頭を使いすぎて疲れ切っていた。
航のダルそうな感じと私の眠気。
ダイニングテーブルの上空にはモヤがかかっていそうだった。
「うん、ありがとう!残りはまた明日、自分で考えて書いてみる」
「ふぁ〜。ねむ」
航は大あくびをして机に突っ伏した。
休憩中によく見る体勢だ。
「航、ご飯できるよ」
ママさんが煮物の味見をして声をかけた。
「ん」
「マッサージいつする?寝る前?」
「ん」
2人の問いかけに1文字で返事をする航は今にも寝そう。
いや、寝た。
隣からスーって聞こえるもん。
「寝ちゃった」
ゆずはちゃんとママさんは優しく笑っていて、暖かいな、としみじみ思った。
前に島田さんが『逢坂は不眠』って言っていたのが心配だったけど、ちゃんと寝れるんだね。よかった。
「結さん、ご飯お待たせしてごめんね。お口に合うか分からないけど、召しあがって」
航が寝ている横に次々とおかずを広げてくれるママさん。
筑前煮とひじきと焼き鮭と冷奴となめこの味噌汁とマグロのお刺身とごはん。
めっちゃ豪華…。
「とんでもないです。ありがとうございます。いただきます」
そういえばお腹が空いていた。
ゆずはちゃんとパパさんママさんも着席して一緒に手を合わせる。
おいしそう。
「結ちゃん、マグロは三切れ食べると疲れが取れるんだよ。たくさんお食べ」
ゆずはちゃんと同じようにちゃん付けで呼ぶのはパパさん。
さり気ない優しさに涙が出そうになる。
前に航が生姜焼きを作ってくれた時は堪えきれずに泣いちゃったな。
「ありがとうございます。いただきます」
マグロに醤油をかけて一切れ食べる。
次にごはんを口に入れて筑前煮にも手を伸ばす。
「…おいしいです」
「よかった。たくさん食べてね」
航はママさんに料理を教えてもらったのかな。
同じような優しい味付け。
すーっと心にしみるような。
「知ってる?ひじきって栄養満点だと思うじゃん?今はそんなに栄養ないんだよ」
ゆずはちゃんがひじきを食べながら言うと、パパさんママさんが驚いて「なんでなんで」と突っ込んでいた。
私が親にこんなことを言ったって『で?だから何なの?』で終わるんだろうな。
それ以前に、ひじきなんて食卓に並ばないけど。
「結ちゃんは冷奴に醤油かける派?オリーブオイル派?ラー油派?」
ゆずはちゃんが私の目の前にそれぞれかけるものを並べてくれた。
「うーん。ゆずはちゃんは?」
「オリーブオイル!お肌スベスベになるし体にいいよ!疲れが取れるかは分かんないけど」
もしかして私、疲れてるように見えてるのかな?
「じゃあ〜オリーブオイルかけてみようかな。スベスベになりたいし」
「スベスベになろ〜」
食卓を囲んでこんなに楽しいなんて、いつ以来?
うちじゃ考えられないな。
ポカポカ暖かい晩ご飯なんて。
空気も、ごはんも。いつも冷たい。
「結さん。私たちのこと家族だと思ってなんでも言ってちょうだい。遠慮なんかしないで」
「え?あ、ありがとうございます」
急にどうしたんだろう。
初対面なのに。
「結ちゃんはもううちの娘だからな」
パパさんも。なんか逆に気を遣わせてるんじゃない!?
「あの、私全然疲れてもないですし、迷惑かけるつもりもないので、ほんと大丈夫ですから!」
お箸を置いて「すみません」と謝ると3人はなぜか困った顔をした。
なんか間違えた?
「結ちゃん、大好きだよ」
ゆずはちゃんまで、急に何!?
混乱して黙っていると横でぐーすか寝ていた航が起き上がった。
「俺も大好き。…隠さないで。色々と」
寝ぼけてるくせにカッコつけちゃって…。
カッコいいけど。
「いつでもおいでね。ご飯作ることくらいしかできないけど」
ママさんは航のご飯を用意する為に立ち上がりながら言ってくれた。
「…ありがとうございます」
どうしちゃったの、みんな。
私は全然平気だよ。


