「なるべく早く帰ってきなさいよ、どこで観るの?」
「まだ決めてない、ショッピングモールで五時に待ち合わせ」
「ショッピングモールの屋上なら近いからいいかもね、そこで観たら?」
ショッピングモールは家から歩いて行ける距離だから、花火が終わったあと帰りの心配もいらない。あまりにも帰りが遅くなるなら迎えに行くこともできる。
そんなことを考えながら気を紛らわせる。
「まだ考え中。お母さんもお父さんと行ったら?」
和佳が言うとは思わなかった言葉に驚いんた。彼が花火に行こうと言ったことの方が驚いたけれど、同じくらい驚いたかもしれない。
もしかしたら和佳は彼氏と一緒に行くから、私にも勧めているのかもしれない。余計な詮索を始めると、胸の鼓動が少し速くなってきた。
「休みだけど行かないよ、人ごみが嫌いだから。家で音だけ聴いてるよ」
「音だけって、全然花火じゃないし」
くすっと和佳が笑う。つられて私も笑ったけれど、速くなった鼓動はまだ治らない。

