腰に違和感を感じながらぎこちない歩き方でテラスへ出ると、鮮やかな花火が空いっぱいに埋め尽くした。黒い空を塗り替える極彩色の光の花が咲き誇る。次々と頭上に咲き広がる花火の軌跡を追いかけるうちに、胸が熱くなって鼓動が速くなっていく。


瞬きするのも忘れて、吸い寄せられるように空を見上げていた。


こんなに間近で花火を観たのは、初めてじゃない。視界に映る景色が、記憶の奥底に眠っていた景色と重なる。舞い降りてくる光の残像が記憶を呼び覚ます。


以前にも観たことがある。


彼と初めて花火を観に行った時だ。


あの日はここではなく少し離れた埠頭から眺めたから、もう少し花火は遠くて小さかったと思う。ここから観る方が花火は近くて大きくて迫力がある。


真上で花火が開くたびに、遠ざかっていた思い出が蘇ってくる。


彼と一緒に観た花火だけでなく、観た景色も感じたことも。もちろん今よりも若かった彼の姿まで。