こんな席、どうやって手に入れたんだろう。
尋ねたいけれど、今尋ねてもいいものか。驚きと迷いの気持ちが入り乱れて落ち着かないうちに彼がオーダーを済ませる。
尋ねるなら今かもしれないと思ってひと呼吸。
「どうして、ここなの?」
尋ねたいことが多過ぎて、出てきたのはおかしな質問だった。それでも彼には通じたらしい。彼は少しだけ恥ずかしそうな顔をして頷く。
「会社の後輩が教えてくれたんだ」
「だったら……その子もここに?」
「いや、彼は大学時代の友人の家で観るらしい、毎年友人たちと集まるんだと言ってた」
「家から花火を観られるなんて羨ましい」
「彼はこのホテルの宿泊プランを狙ってたんだ、何年も応募しているけど当たらないとボヤいてたよ」
「宿泊は抽選なの?」
「そうだよ、花火の日は毎年春に応募受付が始まるんだ」
と言って、彼が口を噤んだ。
少し慌てた様子でテラスへと視線を泳がせる。
「もしかして、このレストランも?」
問いかけると彼は答えたくなさそうな顔をして、ゆっくりと私へと視線を戻した。

