「おかしくない?」


じっと見られるのが恥ずかしくて、自分から問いかける。ポーズを取るようなことはしないけれど直立したまま、ワンピースの裾を気にしてみたり。


「うん、似合ってるよ」


彼は答えながら立ち上がり、スマホをパンツのポケットに入れた。もう私の方は見ていないからほっとした。


「どこ行くの? ショッピングモール?」

「いや、港の近くまで行こう」

「本気? 混んでるよ? 今から行っても観る場所無いんじゃない?」


花火が打ち上げられる海上をぐるりと囲む港周辺は混雑必至。早い時間からの場所取りは禁止されているとはいえ、もう既に場所取りが始まっている時間だ。良い場所は無いだろうし、あんな場所に行ったら渋滞に巻き込まれて帰りは遅くなるに決まっている。


「大丈夫、良い場所があるから」


さも自信ありげな表情で、ついて来いと言いたげに背を向ける。いったいどこから湧いてくる自信なのか、反対に私は不安でいっぱいだというのに。


「どこ? 和佳が帰るまでに帰ってこれる?」

「鍵持って行ってるんだろ? 心配しすぎだ、もう子供じゃないんだから」


と言って、彼は玄関へ。


もう何を言っても無駄だ。