牢獄を出たナムはハデスの真の姿を目の当たりにした。
大勢の亡霊と交戦する醜(みにく)い化け物の姿があった。
耳たぶはむしり取られたのだろう。
痛々しく耳の軟骨が見えている。
目玉は黒く染まり、髪は血で固めたように赤く逆立ち、猛獣のような鋭く尖った牙を生やしていた。
ハデスは顔を真っ赤に染めて次から次へと亡霊を切り刻んでいく。
ナムは亡霊と共に戦う事を決意し、変わり果てたハデスに向かって行った。
「退けっ!」
ナムの一声で亡霊の大群がハデスへの道を作った。
「ナム…それで俺を殺すつもりか。」
口を大きく開け、鋭く尖った牙を突き出して威嚇してきた。
その姿は猛獣そのものだった。
恐怖は感じていた。
それに勝算が無いに等しいのも分かっている。
それでもナムは行き場のない亡霊達を救いたいという気持ちだけでハデスに挑もうとしていた。
「そんな姿になってまでも生きたいか?可哀想に。」
威嚇を挑発で返した。
ナムのちっぽけな反抗のせいでハデスを怒らし、魔の恐ろしさを身を持って知る事になる。