ナムの表情が堅くなった。
「これが親友に対する礼儀か…。」
ハデスが掴んだナムの袖には破魔用小型銃が忍ばせてあった。
「ヘッ!あの頃の弱い俺は消えたんだっ!ウリャ!」
反対側の手で腰から素早く斬魔刀を取り出し、ハデスに切り込む。
ハデスは一瞬でナムの心を読み、魔力で腕の骨を刀に変えて斬魔刀を受け止めた。
「無駄だ。お前が凄腕のハンターだとしても俺は切れん。」
「今のは小手調べさ。また、近い内に村人の仇(かたき)をとりにくる。」
二人は別々の帰路を歩みながら仲が良かったあの頃をそれぞれ思い出していた。
ナムは勇敢で頼もしいハデスを兄弟のように接していた事を思い出し、ハデスは弱虫で泣きべそだけど周りの反対を押し切ってまで自分についてきてくれた。
だが、ハデスの中では信じていた者に裏切られて生まれた絶望感が全ての善心を呑み込んでしまう。
村人全員を殺し、ナムを殺すまで絶望感が心を蝕(むしば)むのだ。