乾いたタオルに水分を含ませ、額に置く。
そんな動作を繰り返していた。
「ぎゃあああ!」
隣の家から悲鳴が聞こえてきた。
「どうしたのだろう?」
窓の外から顔を出し、隣の家へ目を向けた。
すると、バルコニーで小さい女の子にはらわたをむさぼり喰われている‘ピグ爺’の姿が…。
「助けなければ!」
三十代後半の男が外に出ようと扉を開けると、村の中心部にある広場に無数の化け物が徘徊していた。
よく見てみると、徘徊しているのはハデスに殺された村人達だった。
男は気づかれないようにゆっくりドアを閉めると、ダーン!とよく聞く散弾銃の音が響いてきた。
「またあの悪夢が…」
ガクガク震える足を必死で抑え、息子を抱えて地下へ逃げようとした。

バンバンバンバン!
また外から銃声が音を立てている。

地下への階段を降りようとした足が止まった。
階段の中間にチェーンソーを引きずって歩く巨体、両膝には縫い目があり、眉間から上に大きな切れ込みがあった。
それは紛れもなく村一番の強者だった。
男は下の二人の無事を祈り、二階へと逃げていった。