ユウジがあげたものだったんだなあ、と何やら納得した様子で、カインが微笑ましげに城中を駆け回る二人を眺めている。

やつらの追いかけっこは建物の損害的にしゃれにならないのでできれば控えてほしいのだが、リュータをからかうのが楽しくてたまらないらしいレツをどうにかしないことには城が破壊される頻度は減ることはないだろう。


 マムとの決戦は、彼女らの回線からのアクセスを絶つことで決着した。

アクセスできなくなったこの世界を彼女らがどう扱うかという不安はあるが、今のところ再アクセスを試みようとされている時点で即廃棄ということはなさそうだ。


 再アクセスの際にやってくる光の女神のようなものは、その都度自分たちで追い払うことにしている。アクセスポイントは各神殿と魔王城のみ。

蘇生魔法に成功し呼び戻すことのできたレツやカイン、それからヴェルターやノア、プロフェットにも協力を仰いでそれぞれのポイントの監視を頼んでいる状態である。


 魔王引き継ぎを行わないままで魔王城の管理者登録ができたのは良かったと思う。

レツやカインも連れて一度現代に帰ってみたところ、二人はずいぶん遊び歩いて満足してきたようだ。

レツはどうやら二十年近く前に行方不明になったという扱いになっていて家には帰れなかったらしいが、家族や友人の無事を確認できたからいい、とさほど悲しんでいる様子はなかった。

今更戻っても、本来三十代になっているべき子供が中学生くらいの外見で当時の記憶のままだなんて家族も卒倒するに決まっている。とはレツの話だ。

彼の場合は冒険の時から王の守護者になるまでで数年、守護者になってからは見た目が変わっていないという変遷のおかげでさらにややこしくなっているが、時間の流れの違うあちらとこちらでは、片方に長居するとそういった事態になりかねない。