「待てレツー!」


「だっはっはっは! リュータが怒ったー!」


 修復された広い魔王城の中を、お子様二人が元気よく追いかけっこしている。


「カイン、あいつら今度はなに?」


「リュータが大切そうに持ってたお菓子をレツが勝手に食べた瞬間なら目撃したけど。確か焼き菓子だったよ。紅茶に合いそうな」


「あー……、あのクッキーか」


 自分が実家に帰るついでに、作って持ってきたものだ。

たまの暇つぶしに母がお菓子作りをすることがあって、いわゆるキャラ弁の類を創作することが趣味である母に、リュータの顔をデフォルメしたクッキーは作れるか何気なく聞いてみたのである。

竜太くんに食べてもらうなら張り切って作るわよ、と何故か自分まで手伝わされてしまった。


 何が彼の感性に響いたのかは知らないが、作ったから食べてみてくれとリュータに手渡したところ頬を紅潮させていた。

大切そうに持ってた、というならおそらくそのクッキーを一枚レツにくすねられたのだろう。


「あれ、食べずにどうにかして永久保存したいから氷魔法教えてってリュータがぼくにすごい真剣な顔で弟子入りしようとしてきたんだよね」