【BL】お荷物くんの奮闘記

 だが、ここでいう「ラック」とはステータス上のものである。この世界をゲームにたとえると、幸運度にあたる部分と乱数から算出される数値が運命を決めていることになる。


「……だったら、異世界人は異世界人らしく、リアルラックで勝負するまでだ」


 合流魔法陣の消費MPは1。念じればそれだけで発動する、構成の必要のない魔法だ。

手持ちのMP回復薬をすべて取り出して、ソシャゲのガチャよりも絶望的な確率との戦いを覚悟した。


 発動は失敗に終わり続ける。見る間にMPが減り、回復薬をひとつ口に放り込む。噛み砕いた。再び魔法陣を発動させる。

地味で途方もない試みを繰り返す。手持ちのMP回復薬はあっという間に残り一つになってしまった。


 そこで攻撃魔法の衝撃音が響いていた魔王城が、急に静かになった。戦いが終わったのかもしれない。

どちらが倒れたにしろ、今ここでリュータの元に転移できなければすべてが終わる。


 何百回目かの発動が、ふとその時遮るものなくすんなり通った。行ける。

目を閉じて、リュータの居る魔王城最終フロアをイメージした。再び目を開ければ、そこは崩れかけた天空の城だった。


 床に倒れているのはカインだ。朦朧とした意識の中、彼が笑う。


「これで、魔王は、……ぼくが最後」


 自分がこの場所に潜り込んできたことにも、もう気付いていない。